人は褒められたように生きられる。  (2005.5.1)

「超一流の人ってどんな人?」って聞かれたら
みなさんは何と答えますか?

勿論 答えはいくつもあるでしょうね。

私は何のためらいもなく
「人のいいところだけを見つける人」って
言い切ります。

なぜ長所ばかりを見つけられる人が超一流になるのでしょうか?

3つの理由を挙げます。

① 見つける感性を磨けるから
② 見つけることで真似できるから
③ 見つけて褒めることで仲良くなれるから

短所は努力しなくても見てしまいますが
長所は気をつけていないとわからないままで
過ごしてしまうことが多いものです。

真似は大事です。
学ぶとは真似ぶこと。
いいことだけ真似るのがいいですね。

仲良くなれるってとってもいいですね。
モテる人とは、また会いたいと思わせてくれる人のことです。
褒めるポイントがわかるって、いいですね。

ところで、褒めるって何でしょうか?

「褒める」って
「見つける」ってことなんです。

もしかしたら、その人が気づいていない
とっても素晴らしいところを
見つけてあげて、教えてあげることなんです。

教えてあげて、勇気づけてあげることなんです。

もう20年近く前の話になりますが
私がリクルートで務めていた時の話をします。

私は当時、リクルートブック(現リクナビ)の
営業を担当していました。

1年間 ずっと追いかけていた会社がありました。

やっと 契約も貰えそうな雰囲気になり
それなりに資料も揃えようと
大阪の調査部に電話をしました。

建築学部の学生の資料を受け取ろうと思いました。
その時、電話に出てくれたのが
桑島さんという新入社員の方でした。

桑島さんはとても丁寧に教えてくれました。

そして、彼がひと言
「柳本さん 僕でよかったら
その会社に同行しますよ」と

「いやーそれは悪いでしょう。
桑島さんもお忙しいでしょうから」

「僕たちの仕事は、営業マンと同行することなんですよ。
少しでもお役に立てるなら 嬉しいですから」と。

私は次の週 調査部の桑島さんと一緒に
Kという地元の工務店に行きました。

契約自体は1年近くも通ったこともあり
すぐに決まりかけました。

ただ厳しい値引き交渉に入りました。

「なんぼになる?」(K社担当者)

「すみません。値引きはできません」(柳本)

「何を言うとうるんや? 世の中値引きは当たり前や。
広告屋は値引き交渉を受けるもんやぞ。
今まで、値引きなしに 仕事を発注したことなんかあるかい」

「本当にすみません。値引きせなあかんような
商品は売ってはいませんから」(柳本)

こんな交渉が数十分も続きました。

私の横で桑島さんも一生懸命
頭を下げながら 「値引きはできません。お願いします」と
何度も言ってくれていました。

実際、値引きは当たり前のように行われていましたし、
営業マンの判断で許される値引きの範囲もありました。

ただ私は値引きまでして、仕事を貰うようなことは
性格上、どうしても出来ませんでした。

価格とは お客様と会社が共に利益が上がるよう
設定されたものですからね。

「値引きはしない」 これは自分との約束事でした。

1時間ほど経った時
担当者の方が「もうええわ」と言いながら
契約書に判を捺してくれました。

「値引きもしてくれへん 営業マンなんか
初めて見たわ」と
ニコニコしながら
言ってくれました。

会社の門を出た後
私は桑島さんと何度も握手をしました。

「ありがとう。桑島さん」

「おめでとう。柳本さん」

会社までの帰り道のこと

「僕ね。初めてですよ。
一切値引きもせずに 受注を頂いた営業マンを見たのは
それに柳本さんって 相手の会社のことも
リクルートのことも 全部考えて仕事してる・・・」

「いやーそんなんちゃうよ。
ただ値引きまでして、仕事を請け負いたくないだけやねん。
将来、独立した時にも同じ気持ちで、仕事したいから
自分との約束を守りたかっただけやから・・・」

「柳本さんって、神戸のトップ営業マンなんでしょう?」

「まさか! 僕、売上全然あかんねん。
いつも最下位争いやねん。
よくて真ん中の下ぐらいやから・・・
全然 営業に向いてないんやと思うわ」

「僕ね。この前ある支社の営業マンと同行したんですけど
なんか残念に思って、
数字をあげたいっていう思いだけで、
お金に頭下げる典型の人やったから。
柳本さんは 人に感謝することには 深々と頭下げるけど
お金には全然媚ひんし、頭も下げへん。
受注が欲しいとかそんなセコイ考えなんか全然ないし
堂々としてて ホンマにカッコええと思うわ」

「そんなんちゃうって 全然 あかんねん 僕は・・・」

「柳本さん、もしかしたら今、たまたま売上が
あがってないかもしれへんけど
柳本さんって、凄い人になってると思う。
本当にそう思う。
柳本さんも独立しはるんでしょう。
僕も将来、社長になって堂々と生きていきますよ」

「ありがとう」

私は照れくさそうに答えるのが精一杯でした。

とても嬉しかった。

この頃、誰からも褒められることなどなかったですからね。

それから半年ほど経ち
私はリクルートを退社することになりました。

退社の前日
私は一度しか逢ったことのない
桑島さんに電話を入れました。

「桑島さん ごめんな。
あんなに褒めてもろうたのに
僕はやっぱり全然あかんかったわ。
ホンマに、ごめんな。
でも、でも 次の会社では
桑島さんに褒めてもろうたような人間になるわ。
ホンマに、ありがとう。
あの時、ホンマに嬉しかった」

「柳本さんが 辞めるのは辛いけど
柳本さんは 絶対大丈夫ですよ。
僕が一年間見てきた中で
一番の営業マンやったから・・」

私は泣いていました。

彼の言葉が嬉しかったし、自分の成績が悔しかったし。

その後、次の就職先で
私はダントツの売上をあげる営業マンになっていました。

10名程営業マンがいる会社で
気がつけば会社全体の売上の約60%は私があげていました。

人は褒められたように生きられます。

だから  だから
本当にいいところを見つけたら
褒めてあげてください。

人は誰でも
キラリと光る何かを持っています。

時に それは何かの理由で
隠れていたり
曇っていたり
しているだけです。

だから
見つけてあげて、褒めてあげてくださいね。

現在、
桑島一恭が起こした会社は
上場に向かってまっしぐらに進んでいます。

褒めた人がまた更に、光輝くのです。

褒められる人生も素敵だけど
それ以上に 人を褒める人生がいいですね。