9月4日朝4時 この日の私は早起きです。
自宅から6時間かけて、三重県御座白浜に向かいました。
親友の沖田勝彦が主催するレゲエイベントに
参加するために。
午後1時 開場と同時に
暗雲が立ち込めてきました。
今までの晴天がウソのように
辺りは急に薄暗くなりました。
雨
一番、来て欲しくないモノがまるで
トキを合わせたかのように
やってきました。
ただ、レゲエバンドも参加者も
雨など
吹き飛ばすかのような勢いで盛り上がっていました。
その中でずっと海岸を走り回る男がいました。
沖田勝彦です。
この2週間ほとんど睡眠もとらずに
前日も寝ていない。
そんな彼が一日中走り回っています。
周りのスタッフにいつも声を掛けていました。
雨に濡れたスタッフも
彼のねぎらいの
言葉に元気を取り戻していました。
誰に対しても気配りを欠かせません。
私は「少しは休めないんか」と声を掛けようしましたが
彼の輝く瞳は「そんな必要もないよ」と
私に言っていました。
しかし、
どんなに努力しても
どんなに人のために頑張っても
どんなに緻密な計算をしていても
どれだけ素晴らしい志を持っていても
報われないことはあります。
自然の力の前には人間の思惑など遠く及びません。
今日の大雨には誰も勝てません。
音響機器が突然故障。
照明機材は落下。
午後8時までイベントを開催したものの
続行はもう不可能です。
明日のイベントも開催できません。
この日のために彼がしてきたことは絶大でした。
1年にも及ぶ海岸の清掃、
レゲエバンド勧誘のための全国行脚。
すべては人のためでした。
はじめから自分たちの利益など考えてもいなかった。
沖田は露天商の店主や参加者
みんなに頭を下げ謝りに回りました。
ただ、許してもらえるはずもありません。
そんな中、私は沖田に対して
何もしてあげられません。
何も 何も 思いつきません。
イベントの後片付けをする以外に
出来ることすらありません。
せめて、一生懸命 撤収作業をしていました。
砂に埋もれ動かなくなったトラックを力いっぱい押しました。
このモヤモヤした歯がゆい気持ちをトラックに
ぶつけていました。
沖田は私と目を合わすと、必ず笑顔になります。
何の言い訳もしません。
彼からは愚痴のひとつもでません。
嘆きすらありません。
三重県をあげての大イベントです。
それが全てダメになるのです。
どれだけの損失か。
どれだけの額の借金を背負ってしまうのか。
考えただけでも愕然とします。
天が与えた試練としてはあまりにも残酷です。
あの素晴らしい志を持った侍に対して。
その悲劇を背負っても彼は毅然としていました。
一生懸命 みんなに頭を下げながら・・・。
誰だってボヤきたい時、嘆きたい時はあります。
この状況なら誰でも何か言いたいものです。
人はムッとした時や辛い時、
自分のせいではないのに不利益が生じた時、
その人の人間性が出てしまうものです。
どんな時でも平常心でいられる彼には頭が下がるばかりでした。
今夜、私は『本物の男気』を目の当たりにしました。
心から私は沖田勝彦を尊敬しています。
PS
5日 午後7時7分
三重県に震度5の地震が発生しました。
大きな津波も発生していました。
もし、御座白浜でイベントを続けていたら
津波による死者が出ていたかもしれません。
大惨事は免れなかったでしょう。
沖田は天に守られていたのです。